おやつは日本発の文化?!

おやつは日本発の文化?!

「そろそろおやつの時間だよ~」なんていう母親の声に、待ってましたとばかりにテーブルについて口いっぱいにおやつをほおばる。なんていう記憶は誰にでもあるだろう。

学校から帰ると誰もいないということが多かった共働きの我が家は、自分の部屋へ行くと、
「おかえりなさい。今日は学校どうだったかな?」なんていいう母の手紙とともに手作りのおやつが机に置かれていることがたまにあったのを思い出す。忙しい日々を送っていてなかなか宿題の面倒も見てやれず、家に帰っても一人ぼっちになるわが子を不憫に思う母親としての精一杯の愛情だったのかもしれない。

少しふくらみが足りない固めのシュー生地にミルキーなカスタードがサンドされた手作りシュークリーム。
母が帰宅後、「美味しかった?」と何かを期待しているような聞き方に「ちょっと固かった」と言えなかった。
あの味は、私にとって思い出のおやつだ。

で、実はこの誰もがニヤっとしてしまう響きの「おやつ」。日本で生まれた文化だということをご存知だろうか?
江戸時代、1日2食が一般的だったころ、和時計の時刻で「八つ時(現在の午後2時から3時ごろ)」に小昼という間食を摂っていた。その間食を「おやつ」と呼ぶようになり、やがて間食全般を「おやつ」と呼ぶようになったのだ。

ちなみに英語では「アフタヌーンスナック」「スナックタイム」なんて言うらしいが、
こちらは夜の酒場のイメージに近いかな(笑)八つ時にわざわざ丁寧語の「お」をつけて「おやつ」と呼び、昼食と夕食の間におやつを食べるのは日本独自の文化らしい。

この丁寧な言い方ひとつとってもただの軽食やスナック菓子とはまた一線を欠く特別な食べ物文化であることがわかる。
今でこそ、クッキーやチョコレートといった多種多様なおやつがあるが、昔は果物や穀物を調理しておやつとして食べていたそうだ。

1日2食だから、それはお腹が空くだろう。栄養的観点から言っても穀物で栄養バランスを摂っていたというのは利にかなっている。

水戸黄門のご一行もかならず道中茶屋に寄ってはうっかり八兵衛が好物の団子を食べている。ただ彼の場合食べ過ぎてお腹を壊すというのがお馴染みのパターンになっているが。でもあれは団子が悪いんじゃない。八兵衛が食いしん坊なだけだ。

それはさておき、ここ山形県も米を使った伝統的なおやつがある。それが「凍み餅(しみもち)」。炊いたうるち米ををついて四角い形にしたら紐でくくり、冬の間寒風干して凍らせる。

山形の冷たい風にさらされカピカピになった凍み餅を油で揚げて砂糖しょうゆをからめて食べるのだが、サクサクとした歯ざわりと真ん中の部分はもっちりとしてこれがまた美味しい。
こたつに車座になってハフハフしながら、たわいもない話をして食べるのが至福の時間なのだ。
ひとくちほおばれば外の寒さも忘れるくらい手作りの温かさを感じる一品である。

仕事の合間に、気分が落ち込むときに、おやつを一口食べるだけで救われることがある。
それが例えば左手のラスクなのかもしれないし机の上に置かれたシュークリームなのかもしれない。

そういえばこの間買ったアレがあったなぁ、なんて心の内でワクワクしたり、誰かと分け合ったりするくらいのささやかさがいいもの。そのささやかさや心の元気の源になるほどのパワーがあるという意味でも丁寧語の「お」やつなのかな。

ちょっとした時間に、仕事のパートナーや家族、友達と共有する幸せな時間。
そんな飾らずもとっておきのおやつが日常の中にそっとあったら、小さな幸せと笑顔が増えるのかもしれない。