山形の自然がもたらした美味しい水

久しぶりに地元・山形へ帰ってきた知人と会食をした。彼女は大学進学と同時に東京へ引越し、卒業後も東京で就職、アパレルの仕事に就き自分の夢を実現させていた。

しかしいろんな事情が重なり、このたび山形へ帰ってきたのである。毎日オシャレな服を着て代官山にある職場へ通勤して、お昼は同僚のキラキラ女子と一緒に3000円もするランチコースに舌鼓。流行の最先端で刺激的な15年を過ごしてきて帰ってきた彼女は、きっと雪かきの仕方も忘れてしまっただろう。電話やメールなどでは連絡は取っていたものの、実際に会うのは十数年ぶり。
久しぶりの再会に夜が更けるのがあっという間に感じるほどお互いの近況報告をし合っていた。

井川遥が出ているような雑誌の中でしかあり得ないと思っていた生活をしていたその知人の話を聴くと、以前は羨望と嫉妬が入り混じったようなモヤモヤ感があったが、今は自分なりの幸せの価値を見出しているつもりなので、キラキラした話も喜んで聴くことができる。
私もオトナになったな(笑)

その中で、都会でさんざん美味しいものを食べてきた彼女が、「やっぱり山形の食べ物・お酒は美味しい」と言った。
私も山形に戻ってきて約10年。美味しい食べ物やお酒が山形にあることは知っているし、来県した方が山形はいいところだと口をそろえて言ってくださることがある。

しかし「やっぱり」という枕詞がつくとなんだか嬉しい気持ちになるし、自分が作ったわけではないが「そうでしょ?そうなのよ、おいしいの」と念を押してしまう。
食材にしろ、お酒にしろ、その源は「水」。私たちの生活に欠かせない水であるが、とりわけ山形の水が美味しいのは理論的に証明されている。

 

盆地である山形は周りが山々で囲まれていて、原生林が多い。そこに雨や雪解け水が浸み込み、腐葉土やいくつもの地層をくぐりぬけて住んだ水にろ過される。
中でも飯豊山や朝日岳、蔵王山にはミネラルが豊富な地層があり、口当たりのまろやかな水ができるという。

最近ではサーバーやペットボトルで水を買う家庭が増えていて、水道水を飲料水として利用しているというのを聞くと、信じられないという驚きの声をいただくこともあるが、われわれ山形県人からしてみれば、わざわざ水を他から買うということの方が目を丸くして驚いてしまうのだ。

ちなみに山形市の水道水の供給元、すなわち水源は、蔵王ダム、最上川取水場、寒河江ダムの3つ。この中で特に美味しいといわれているのが、馬見ヶ崎川の上流を貯水した蔵王ダムだ。

蔵王ダムは標高600メートルと全国でも有数の高さにある。それだけに水は冷たくて汚染度が少ないのが特徴で、県外から来た大半の人が「山形の水はおいしい」「カルキ臭さがない」と口をそろえる。
実際、山形の水道水は、厚生労働省がまとめた「おいしい水の要件」をクリアしており、ミネラル分の指標になる硬度や鉱物イオンなどの蒸発残留物、塩素イオン、臭気などの各項目で要件数値を満たしている、まさに「甘露の水」なのだ。

一般的にもトップクラスといわれているような水を使った米や酒は今や山形ブランドとして全国や世界でも高い評価を得ているが、山形を代表するお菓子「ラスク」も山形の水は欠かせない。ラスクが何で出来ているのかと言えばご存知の通りフランスパンだ。

フランスパンにも実は様々なレシピと製法があるが、シベールのラスクは、ラスクに一番あった小麦粉と山形の水が使われている。
ミネラルがたっぷり入った山形の美味しい水は、フランスパンにするのにちょうどいい生地にするだけでなく、もっちりとしたパンに仕上がり、いくつもの工程を経て「シベールのラスク」として私たちの手元に届くのだ。山形の自然がもたらした美味しい水と職人によるたゆまぬ努力と情熱は、わたしたちに美味しい時間を作ってくれるのである。

 

さて、山形に久しぶりに戻ってきた東京キラキラ女子である私の知人、一度東京へ戻るということで、翌日山形駅まで送りに行った。
「会社のみんなと食べて」と渡したシベールのラスクを持たせると、「ありがとう!またお正月休み明けに山形帰るから、美味しいもの食べに行こう!」と笑顔で手を振って出発した。