晩冬に優しい蝋梅の香りを聞きながらラスク

 森に囲まれた里山ソムリエな日々
里山でラスクを頂きながらあんなこと、こんなことおしゃべりする、そんな時間が届きますように。

晩冬に優しい蝋梅の香りを聞きながらラスク
晩冬に優しい蝋梅の香りを聞きながらラスク

 

 冬土用を迎えた頃、西の友人からやさしい便りがありました。山形に以前暮らし、今は佐賀にいる大切な人。お会いしたのは数回のはずなのにいつもどこか近くにいる女性。「心が通う」ということはこういうことなのかもしれません。
やさしい便りと一緒に届いた蝋梅の枝、佐賀から山形へ旅をして、春への兆しを香りで届けてくれました。

 雪が降り、モノトーンとなった日に、蝋梅の花と香りは光をさしてくれたようで、雲の隙間からお日様ものぞいてくれました。蝋梅は、花が梅に似ているので、梅の名前をかりていますが、陰暦の朧月12月頃に咲くため、晩冬の季語になっています。

 雪の里山に、蝋梅のロウ細工のような花びらと重なる冬の花があります。ここに暮らし始め、初めてお正月を迎えた大雪のある日、農家のおじいさんが届けてくれた笹野の椿です。
東京から引っ越した私が、雪ばかりで花も見ないで嫌になってしまわないようにと、自ら作って持ってきてくれた造り花です。心配してくれる人が近くにいることがうれしくて、ありがたくて、今も笹野の椿を見るたびに温かい気持ちになります。

 笹野の椿は、和紙で作った花びらを溶かしたロウの中に浸し作られます。貴重なロウをまとった後は、緑の葉だけをつけた雪椿の枝につけられ、花を咲かせます。雪椿の枝は、雪の中、山へと取りにいったものです。

 目の前にいなくても、多くの言葉を交わさなくても、その人の生き方を感じて、想像力で「心が通う」こと、降り積もった雪を眺めながら、温かい気持ちになりました。
 さて、今日のスケッチは、ジョージ・ジェンセンのイヤーペンダントです。

ジョージ・ジェンセン ペンダント エイコーン イラスト J. Kikuchi
ジョージ・ジェンセン ペンダント エイコーン イラスト J. Kikuchi

 銀細工師ジョージ・ジェンセンによって創業されたプランドには、宝飾品だけでなくカトラリーやコーヒーポットなど暮らしを豊かにする様々なものがあります。芸術性とものづくりの確かさを感じるデザインに心惹かれ、仕事でコペンハーゲンを訪れると必ずお店に足を運びました。
このイラストは、ジョージ・ジェンセンのデザインを再現したイヤーペンダントの最初の作品で、どんぐり(エイコーン)がデザインされたものです。ジョージ・ジェンセンのデザインには、自然を基調にしたものが多く、イヤーペンダントのモチーフにも、花や植物が多く使われています。その時代のアールヌーボーの影響だけでなく、きっと彼の生い立ちにも由来しているのでしょう。

 その後、母親になった私は、家族でデンマークに暮らす機会がありました。自転車に娘をのせて森の中を走ると、本当にたくさんのどんぐりに出会いました。デンマークの森にはブナ科の落葉樹が多く、落ち葉の絨毯どころか、落ち葉の中に小さな娘はかくれんぼできるほどでした。毎日のように森に出かけ、集めたどんぐりでネックレスをつくりお揃いでおしゃれをしていると、散歩をしている老夫婦にこんな言い伝えを教えてもらいました。
「一粒のどんぐりをもっていると幸せになれるんだよ」

 今暮らしている山形の里山の森にもどんぐりがたくさん落ちています。秋にわが家を訪れた親子が、裏山の森に出かけ、子供さんが手をグーにして帰ってきました。「お母さん、おうちでどんぐりの木を育てよう。」
開いた拳からヒゲのような芽を出したどんぐりが出てきました。
いつか大きなどんぐりの木の下で、その日のことを思い出すかもしれませんね。

楽しいおしゃべりをラスクと一緒に。