山形ならではの冬のごほうび

「冬のごほうび」といったらなんだろうか。寒い時期、なかなか外へ出る機会が少なくなるが、実は冬こそ山形には魅力がたくさん詰まっていて、それこそ家族に友達にそして自分自身に「ごほうび」をあげるにはいい季節だ。

先日書いた蔵王の樹氷はもちろん、雪灯篭が白銀の世界を照らし出す米沢の「上杉雪灯篭まつり」など雪を資源とした観光スポットや雪まつりが各地で目白押しだ。そして冷えた身体を温めるには「温泉」が格別。

冬の銀山温泉の夜景
冬の銀山温泉の夜景

 

日本は温泉大国と言われている。世界のほかの国にある温泉地の数は一国につき100~300ヶ所ほどといわれる中、日本の温泉地の数はなんと3000ヶ所以上もあるという。日本がこれほどの温泉大国になったのは温泉ができあがるメカニズムがあるからに他ならない。

島国である日本は、山が多く、平地が少ない地形だ。山が多い分、火山も多く地震大国でもあるが、そのかわり日本は、日本中で温泉が楽しめる国でもあるのだ。
しかしそれだけならば、アメリカやロシア、アイスランドも火山が多い国なので、温泉の数と火山の数が比例するはずだ。しかしアイスランドでは温泉は約300ヶ所ほど。日本の3,000という数字には遠く及ばない。

これは日本とその他の外国の文化の違いが大きく影響されている。温泉に限った話ではないが、外国では入浴するという文化がほとんど根付いていない。日本人が毎日お風呂に入るというと驚かれるほどだ。

汚れを洗い流す、リラックスする、また湯治場として病を治してくれる大切な場所として入浴という行為に大きな意味を持っていたのだろう。したがって入浴という文化を持つ日本だからこそ、各地で温泉を見つけてはその地を開拓してきたのだ。

そしてここ山形県はすべての市町村に温泉があるという、ちょっと珍しい東北の温泉王国だ。昔懐かしい湯治場や古くからある温泉宿、落ち着いた老舗旅館も多いが、仕事帰りや休日に家族でふらっと立ち寄れる日帰り温泉施設もびっくりするほど多い。

しかもいわゆるアミューズメント系というより入り口付近に地元の特産品や、採れたて野菜が陳列されているようなどこか懐かしい、しかししっかりと源泉掛け流しという日帰り温泉だ。

この「ちょっとひとっぷろ」という環境は、他県出身の夫から言わせればかなりのカルチャーショックだったらしい。
ごく当たり前に「今日はちょっと寄って行くか」という流れで日帰り温泉施設へ行き、ごく当たり前に車のトランクに常備してあるシャンプーなどが入った「温泉セット」を取り出す。
仕事の疲れを取り、ついつい長居してしまう心地よさ。しかもたったの350円で!
「こんなにリーズナブルに温泉に入れるなんて山形に来てよかった」と、こちらへ来たばかりの頃は週1ペースで通っていて、しまいには顔なじみになってしまうほどだった。

ふらっと立ち寄れる日帰り温泉施設
ふらっと立ち寄れる日帰り温泉施設

 

お湯に入ることによって浮力が働き、全身を支えていた筋肉の緊張がほぐれるし、水圧がかかることによって血行が良くなってマッサージ効果もある。
それぞれの泉質によって様々な効能も期待されるし、普段とは違う環境に身をおくことで日常のストレスから開放される。

心と体に充足感を与えてくれるという意味では、美味しいスイーツを食べている時と感覚が似ている。上質な素材としっかりした歯ざわりを舌で感じると自然とからだの緊張がほどけてくるし、季節ごとに登場する新しいフレーバーラスクのやさしい味に、充足感で満たされていくのだ。
まさに私にとっては、温泉もスイーツも体と心の栄養になっている大人のたしなみなのかもしれない。

一説によると、空腹で温泉に入るとエネルギーや糖分が不足し、効能の強い温泉に入ると疲労感を感じてしまうらしい。温泉旅館に甘いお菓子が置いてあるのは、そういったことを防いでくれるということもあるようだ。

今お気に入りのラスクとともに、今日はどこの日帰り温泉に行こうかあれこれを探すのも山形ならではの「冬のごほうび」なのだ。