エンジュの木のお雛様とお内裏様にラスクをどうぞ

 森に囲まれた里山ソムリエな日々
里山でラスクを頂きながらあんなこと、こんなことおしゃべりする、そんな時間が届きますように。

エンジュの木のお雛様とお内裏様にラスクをどうぞ

 小さな頃、桃の節句が近づくと、おひなさまに会えるのがとても楽しみでした。節句を迎えるまでの日々、ひなあられやひし餅、色んな干菓子がひな段に並べられて行きました。
そして節句の頃には、祖母と一緒にお赤飯を蒸かして、その上に庭の南天の葉をそえ、胡麻塩を半紙に包み、風呂敷に包んでご近所にお届けに行きました。

空になったお重を持って帰り 、お重の蓋を開けると、中には小さなお菓子や懐紙のおうつりが入れられていました。「ごちそうさま」や「これからもよいおつきあいを」のメッセージを子どもながらに感じました。
四季折々の行事を通して、人と人をつなぐ文化が家庭や地域で伝えられていたのかもしれませんね。

 さて、暦の上では春を迎えましたが、まだまだ雪深い山形、青空がのぞく日にスノーシューをはいて、森へ歩いて行きました。高くつもった雪の上から、くるみの木の枝に近づくと、ニコッと笑った模様をした木の芽に出会いました。笑顔で生まれてくるすてきな命、小さな春を見つけうれしくなりました。

 裏庭の森から戻ると、近くに住む木地師の方がお雛様とお内裏様、そしてお揃いの木でぼんぼりを作って届けて下さいました。
東北の木地師の方々は、お椀などの暮らしの器づくりのかたわらで、ろくろ細工のこけしやコマなどの玩具を作ってきました。小さなエンジュのお雛さまにも、木地師の技と遊び心を感じます。

 お雛様とお内裏様にラスクを添えて、幼い頃の桃の節句を想い出す時間、そして今の時間を愛おしむ時間。

南天 イラストTOMMY

 

 さて、今日のスケッチは、南天です。
 里山で暮らし、料理に添えるあしらいを自分の足で取りに行けることは、四季折々の楽しみです。春には、木の芽、桜や桃の花、夏には、花わさびやギボウシ、青もみじ、花きゅうり、秋には菊、稲穂、、、と季節をテーブルに運んで来ることができます。

里山で譲っていただいた古い家の庭には、南天の木もあります。オールシーズン使える南天は、緑の頃も紅葉の頃も、いぶしたような貫禄ある色の頃も、それぞれに素敵です。

 大正生まれの祖母と明治生まれの祖父と共に過ごした昭和、東京の家にも南天の木が植えられていました。日本では、家の北東を表鬼門、南西を裏鬼門と呼び、神様が通れるよういつもきちんとしておくようにと言われたのを思い出します。縁起のよい南天の木を鬼門に植えることもよくあることです。

 山形のこの辺りは、江戸時代から続く家も多くありますが、やはり玄関先に南天を植えています。江戸時代、医師寺島良安により編纂された百科事典「和漢三才図会」にも、「これを庭に植えて火災を防ぐ」とありました。江戸の頃から南天は暮しと深く関わりのある草木だったようです。

 お話を綴っていると青空に大きなくじらのような白い雲が泳いできました。それを見て思い出したのは、山形の最上地方にある戸沢村で頂いた出来たての温かいくじら餅。くじら餅は、お米一升(10合)で作るお餅のようなお菓子で、最上地方のひなまつりのごちそうです。

今年は頂いたレシピで手作りに挑戦してみようかな。
楽しいおしゃべりをラスクといっしょに。