山形の啓翁桜と桜色のラスク

一面を覆っていた雪の間から顔を出す土や緑の草たち。山形の長い冬から目覚めた土や草花の香りが、春の訪れを感じさせてくれる。
これから薄いピンクや黄色といった春らしい色が冬の間の緊張を優しく溶かしてくれる季節だ。そして春の訪れといえば真っ先に思いつくのは「さくら」だ。

「世の中に たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」
在原業平はその昔、このような「世の中にまったく桜というものがなかったなら、春を平和な気持ちですごせるだろうに」という歌を詠んでいた。

先人達も桜の開花に心躍らせたり、散りゆく花びらを惜しんだりしていたのだろう。また、同じような気持ちで、変わりゆく季節を象徴する桜の日本画も昔から数多く描かれた。

そういえば学校にも必ずと言っていいほど桜の木があった。満開の季節はグラウンドが地上に降りてきた花の雲のようで夢か現かわからない幻想的な姿だったのを記憶している。

そして、毎年「写生会」といって全校生徒校庭へ出て、思い思いのアングルで桜の画を描いたが、私は全く絵心がなかったので、6年間入賞したことはなかった。
それでもやはりわずか十日あまりの花の命でありながら、今日に至るまでたくさんの歌や画が世に出されてきたのは桜が愛されている証かもしれない。

実は山形県には一足早い正月の時期に満開の桜を愛でることができる。
「啓翁桜」という冬に花を咲かせる桜だ。決して派手さがあるわけではないが、しなやかな細い枝にたくさんの花が咲きそろう姿が華やかで春を告げる花として注目を集めており、正月の飾りや結婚式・卒業式などハレの日を演出する花としても注目を集めている。

早春の時期にキレイな花を咲かせるためにはいくつかの工夫がある。
12月のうちに枝を取ってきて寒さに当て、出荷時期に合わせて温室に入れて芽吹かせるのだ。

1月から2月だと20日間くらいかかるが、3月に入ると、2週間ほどで出荷できるという。
温室の温度も日中は20度、夜間は10度くらいで調整するというので、寒暖差は約10度。
十分寒さにあたって、桜たちに「春が来た」と思わせるようにより自然に近い状態を再現してやる必要がある。
手間隙かけて育てたものが私たちにひとときの安らぎをもたらしてくれるのだ。

そんな淡い桜色のラスクが今年も人気だ。味は桜ではなくイチゴだが、なんとも春らしい一品である。
袋から出すと、甘い苺の香りが漂う。一見してわかるようにこれでもかと言わんばかりのつぶつぶ苺がぎっしり。
ホワイトチョコと苺をまぜたものをコーティングしている「つぶつぶ苺ラスク」は、これからの暖かい季節にピッタリだ。

またコーティングは表面だけというのもポイントで、シベールのラスクの特徴でもあるラスク特有のサクサクとした食感がしっかりと楽しめるのだ。
こちらも極端な味の主張というよりは苺を食べているような甘酸っぱさが際立つ大人の一品と言えるだろう。
冬が長い山形に少しでも暖かさとやわらかさそして優しさを舌で感じることのできる「つぶつぶ苺ラスク」を味わいながらもう少し春を待つとしよう。