雛飾りとピンクのラスク

我が家にも今年も華やかなお雛様が飾られた。絢爛豪華な衣装にすまし顔。

毎年この時期だけの飾り物ではあるが、「今年も無事に出すことができてよかったわねぇ」などと日本の文化にしみじみと浸るものだ。今飾っているのは娘のものだが、実は私のものもお雛様とお内裏様だけひっそりと飾られる。

昔は客間に7段もの雛飾りが飾られて、日中こそその穏やかな顔にうっとりとみとれてもいたのだが、夜になると、なんとなく人形がこの階段を下りて勝手に嫁いでいってしまうのではないかと少し恐怖すら覚えた。

暗闇にうっすらと浮かぶ白いお顔もその恐怖感を煽られたりして・・・。(泣)
さらに言うと、オルゴールで奏でられる「たのしいひなまつり」のテンポがだんだんゆっくりになるのもわたし的には何か非現実的なことが始まる予感さえして怖かったのを覚えている。

それはさておき、やはり人形師や時代によってその顔立ちや衣装の柄は違うものの
日常の中に飾られた古からの文化が現代に溶け込むと、なんとも趣深い。

雛人形やひなまつりの言われは諸説あるものの、平安時代、宮中に住む子供たちがおままごととして紙の人形(ひとがた)を使って遊んでいたのが雛人形のはじめとも言われている。
今でいうリカちゃん人形か。(笑)

そのうち「上巳(じょうし)の節句」として、紙人形に自分の災いを肩代わりさせて川に流すという厄除け行事となり、「女の子の健やかな成長を願って」3月3日にお祝いする今のスタイルになった。というのが大方の歴史の流れだ。

さて、この雛人形、ここ山形ではこの季節「やまがたひな街道」として、各地域で歴史的な雛人形を飾り楽しむイベントが開催される。かつて川の道として栄えた最上川は、紅花をはじめ、多くの物資を京や江戸へ運んでいた。

そしてその帰りの船には仏像や鮮やかな衣装など華やかな京・江戸文化を乗せて戻ってきたのだが、その中に雛人形があったのだ。たどりついた雛たちは、川沿いの町の比較的豊かな家で飾られ、その文化と歴史が脈々と受け継がれ大切に守り続けててきた。

中には300年以上前の雛人形もあり、その時によって顔立ちや衣装も違い、その時その時の美しさを誇ったまま楽しむことができる。

とりわけ最上川舟運の拠点であった庄内地方ではさまざまな飾り物に幸せの願いを込めて天井から吊るした「傘福」という古くから伝わる伝統的なつるし飾りもある。
鯛や花、桃の実、ぞうりなどの縁起物を吊るし、女の子の健やか成長と無償息災を祈るために生まれた雛飾り。
ゆらゆらとゆれる飾り物には、様々な人の想いと歴史が受け継がれている。

そしてひな飾に供える雛菓子も京文化を受け継いでいて、一般的にはひなあられやひし餅、甘酒などであるが(我が家はまんじゅうやら乳酸飲料やら赤飯など「こりゃ、お雛様たちもお腹いっぱいになるだろう」と思うほどなんでもかんでもお供えしていたが・・・)、野菜や果物、鯛などの縁起物を模した色鮮やかな練り切りが並べられるのだ。

時代とともにかわりゆくものとかわらないもの。家族構成やライフスタイルが変化していく中でこうした文化や歴史が大切にされてきたのは、人間らしく生きるためではないだろうか。

文化や歴史は、人々に楽しさや感動、喜びをもたらし、人生を豊かなものにするのに必要不可欠なもである。
そしてそれは、「ものをつくる」作り手も同じかもしれない、ということを雛飾りに供えられたやわらかいピンクの色がなんともかわいらしいラスクを1枚拝借しながら感じた。

企業が大事にしている信念のもと開発される商品は、新しい創造と価値を生み出す。
そして、わたしたちの生活や人生そのものがより豊かで楽しくいられるという意味では、長く愛される商品は作り手と消費者をつなぐ大きな架け橋になっているのだ。

あぁ、、、今日もラスクが美味しい。ひとつ、またひとつと私の胃袋に消えていくのを、お雛様は優しいお顔で見てらっしゃる。