卒業・進級のシーズンとショコララスク

卒業・進級のシーズンだ。

1年間一緒に登校した6年生が、先日卒業式を迎え、2年生のわが子は、優しくしてもらったその6年生のお姉さんとの別れに涙したようだ。

 

翌日1年間ありがとうという感謝の気持ちを込めてお姉さんに手渡したのは、本人が選んだシベールのラスク「ショコラ」。

4姉妹の一番上のお姉ちゃんということで、みんなで仲良く食べて欲しいということが選んだ理由らしい。
二人にとってこの「ショコララスク」が卒業の思い出のひとつになってくれれば嬉しい。

小学校時代の卒業は記憶が定かではないが、中学時代の卒業式で未だに忘れられない思い出がある。
齋藤由貴の「卒業」という歌詞に「制服の第二ボタンを 下級生たちにねだられ」という甘酸っぱい歌詞があるが、当時まだこの都市伝説は意外なほど女子たちの恋愛感情を高ぶらせていた。

3年間部活に打ち込んでいた私は、とんと恋愛に対する興味関心がなくなっていて、卒業前にそわそわしている友達のことをどこか冷静なまなざしで見ていたのだが、卒業式当日、厳かな式が終わり、玄関で下級生たちに見送られ友達と感慨深く思い出に浸っていると、部活が一緒だったある友達に声をかけられた。

「ねぇねぇ、ちょっと協力して欲しいの・・・」

少しはにかんだような表情で、でもなんだか切羽詰ったようなうわずった声の彼女は、続けて「〇〇くんの第二ボタン、もらってきてほしいんだ」と私に依頼してきたのだ。

ちょ、ちょ・・なぜわたしに?そんなことを・・・。

人生の節目にそんな大事なミッションを私に託すなんてどうかしている!と一瞬にして事の重大さに気づきながら答えに詰まってしまったが、今にも泣き出しそうな、もうこのチャンスを逃してしまったら彼とは一生会えないの。と、言わんばかりの彼女の表情を見たら、断れなくなってしまい、つい「わかった」と返事をしてしまった。

しかし一体どんな手段でボタンをもらえばいいか全く考えもつかなかったし、そもそも何をきっかけに男子に声をかければいいのか皆目検討もつかなかった。

だって中学3年間彼氏なんていなかったのだから。そして途端に今まで味わったことのないような緊張感と不安が襲ってきたのだ。果たしてボタンをゲットできるのか。

そして、私が彼に声をかけたら、私が彼に好意を寄せていると勘違いされてしまうのでは?!という不安もこの期に及んで出てきたのだ。

しかしもう後戻りはできない。彼女はすっかり私を頼りにしている。
今さらながら自分の恋愛偏差値の低さを恨んだ瞬間だった。

結局、それなりにモテた彼は、何人かの女子にボタンのおねだりをされたようだが、誰にもボタンをあげることなくキレイな学ランのままその場を後にした。
私はというと当たって砕けろ精神で彼に単刀直入に「ボタンをください」と言ったものの、もちろん丁重に断られ、手ぶらで事のなりゆきを依頼してきた彼女に説明した。

彼女の思いに報いることができなかったというふがいなさもあったが、ボタンをもらえなったという事実に、まるで好きな男の子にガチで振られてしまったような変な気持ちになってしまったことは否めない。
なんなんだこの変な気持ちは!(笑)

卒業式の季節になるといつもその日のことを思い出してしまう。あれから〇十年。
このコラムの登場人物である同級生たちはみんな結婚して同じ年頃の子どもがいる立派な親だ。

当時ボタンひとつもらうのに血圧が上昇していた私も、わが子が学校から持ち帰ってきた様々な制作物を見て、1年の成長をしみじみ感じているのだ。

160字の漢字を覚え、毎日お風呂で暗唱したおかげで掛け算もだいぶ早く言えるようになった。図書館へ本を借りに行くこともお友達といっしょに遊ぶことも忘れるほど、休み時間に一生懸命縄跳びの練習をして二重跳びを飛べるまでになった。

学年最後の授業参観で披露してくれたときは20回の自己最高記録を達成!
「ママに見て欲しい」と頑張っていたわが子に感動した。そんな彼女も少しだけ自信をつけて3年生に進級する。

成長を確かめ、認めて、喜び、見守る。そんないろんな感情が入り混じる3月が、私はとても好きだ。
あの時私にもそして直接言えなかった彼女にも少しの自信があったなら、結果は変わっていただろうか・・・。

あの時があるから今がある。結果はどうあれ今日よりも明日、何かちょっとでも出来ることが増えるように、また1年、わが子の成長を応援し見守っていきたいと思う。