ラスクで春のおもてなし

 森に囲まれた里山ソムリエな日々
里山でラスクを頂きながらあんなこと、こんなことおしゃべりする、そんな時間が届きますように。

ラスクと羊羹と桃の花のあしらい

 

 山々の残雪を眺めながら、太陽の暖かな光を感じる山形の春。雪の中に隠しておいたわくわくが、雪解けとともに、里にも町にも人々の心にもたくさん現れてきます。梅、桜、りんご、桃たちがつぼみを膨らませ、花開くのも間もなく。

 私が里山でおもてなしをするとき、自分の気持ちがいっしょにわくわくする三つのエッセンスがあります。それは、「季節を盛ること 心を盛ること 言葉を盛ること」

 お料理が特段上手でなくても、季節を盛り付けたお皿はとくべつなおもてなし。ご馳走という言葉は、文字通り、きっと、馬を走らせ、野山をかけめぐり、おいしいものを求めるところから来たのでしょう。

野山で出会った美しい花や木々、足元の草をいっしょに盛り付け、お皿の上に季節を映すこと、それは美しい日本の文化ですね。

 お皿の上に、季節のあしらいを盛り付けることで、シンプルなラスクも春のおもてなしの一品に。おみやげにいただいた羊羹をいっしょに添えました。ラム酒のきいた柔らかい羊羹は、ラスクの上に乗せていただきます。

 季節には、旬とはしりと名残ということばがあります。旬はまさに今を愛でること、はしりは少し先取りすること、名残は去っていく季節を惜しむ気持ち。お皿の上にそんなきもちを同時にのせて相手を思い、盛り付けます。
「四季折々に自然が姿を変えて会いにきてくれます。いっしょに春のあしらいを探しに野山にでかけませんか」

 重い雪で折れた花の枝が、大きな幹を離れても蕾を膨らませ花を咲かせようとしています。
 花を咲かせる力のあるものは、家族という大きな大木を離れてもどこかで花を咲かせます。東北はこれから花の季節を迎えます。

甘いもの好きのひよどり イラストJ.Kikuchi

 

 雪の多かった今年は、いたずらな目をしたかわいいひよどりが、おなかを空かせて、庭先のデッキにやってきました。甘いものが大好きなヒヨドリ、りんごを見つけると、「ヒーヨーヒーヨー」と鳴いて、仲間をたくさんつれてきました。

軒先に残された干し柿もおいしそうに平らげてしまい、我が家はまるで、小鳥のレストランでした。いたずらすぎて厄介者にされることもありますが、単調な冬の景色に差し色を入れてもらったことに感謝します。

 大きなコンテナで届けていただいているりんご、朝起きると搾りたてのジュースにして飲んでいますが、ヒヨドリたちにもおすそ分け出来るのは、農家さんのおかげです。毎朝ジュースにして感じたのですが、りんごは少ししなびてエイジングがきいたものが意外と甘く美味しいです。古いりんごじゃなくて、熟成りんごなのですね。

 しぼりたてのりんごジュースを夜は赤ワインで割って、雪の間から出てきたミントの赤ちゃん葉をそえました。赤ワインは、山形の山の斜面で育ったデラウェアのワイン。

19世紀の英国人の女性旅行家イザベラバードさんが「東洋のアルカディア」と言い残した場所。アルカディアは、自然と人々が共生し、それぞれの命を慈しみあう風土を思った言葉であったのかもしれません。

 一つ一つの素材に感謝を込めて、味合うラスク、そのかたさが一層味わい深く心と脳でおいしさを感じました。
 楽しいおしゃべりをラクスと一緒に。