「いせ、もうで でわ、まいる」

太陽の神様、「アマテラスオオミカミ」はこの世を明るく照らし、すべての生命に豊かな恵みを与えてくださる神様で、西の伊勢神宮に鎮座する。

そして、月の神様「ツキヨミノミコト」は暗闇を静かに照らし、生命のリズムを知らせてくれるアマテラスと共に生をうけた夜の神様だ。

鎮座するのは東の出羽三山。「太陽」と「月」、「陽」と「陰」、日本の東西に離れた神様ではあるが、一生に一度は行ってみたい。というのは古の人々の願いだったそうな。
地元である山形の出羽三山は何度か訪れたことがあるが、西の伊勢神宮には昨年始めて参拝した。

どちらも歴史的建造物としての素晴らしさと風格には圧倒されるが、それにも勝るとも劣らない自然の精霊・エネルギーがすーーーっと入ってくる。
入ってくるというより感じる。というほうがいいかもしれない。忘れていた第六感をくすぐる感覚は、きっと太古の日本人も感じたのかもしれない。

東の出羽三山に詣でることを「東の奥参り」とし、伊勢神宮と共に詣でることは重要な人生儀礼とされ、庶民信仰を集めてきた。

出羽三山は「湯殿山」「月山」「羽黒山」の三つを言い、今から1400年も昔、蜂子皇子が羽黒山を開いたことが、「パワースポット出羽三山」の始まりという。
月山と湯殿山は冬は雪のため閉鎖となるので、出羽三山の中で一年中参拝できるのは、羽黒山のみになる。

一番最初に参拝したのは、確か中学1年生の修学旅行。当時何の知識もなかったので、大きな鳥居と大きな五重塔くらいしか印象に残っていなかったが、4年ほど前にひょんなことから家族で羽黒山を訪れることになった。

参道に入ると、もうそこは山の聖域。
いくつもの杉林が参拝者を見守るように立ち並び、ここが修験の山であることを実感する。
さわさわと木々の揺れる音、鳥のさえずり・・・一瞬で自分の中の眠っていた五感がぐるぐると動き出す瞬間を感じながら歩みを進めていくと、左手に国宝の五重塔が見えてくる。

現在の塔は600年ほど前に建てられたもので東北最古のものらしいが、素木造り、三間五層の歳月を重ねたその美しい姿は一段と存在感を増している。
そして五重塔を過ぎると、ハッと現実に引き戻されたような全長1.7km、2446段もの階段が現れる。

これを今から登るのか。。と思うと気が遠くなるのだが、途中の石段には盃やひょうたんなどの絵が33個彫られており、全部見つけることの出来た人は願い事が叶うそうだ。

残念ながら私は見つけられなかった。それよりも前に息が上がってしまった・・・。
というのが本当のところ。そして2446段の階段を登りきった先に「三神合祀殿」がある。

萱葺きの建造物としては日本最大の大きさで、その姿を見て参拝できただけで、2000段以上の階段を登ってきたことが救われた気がする。

「三神」ということで、ここは「湯殿山」「月山」「羽黒山」の神々が祀られており、三山の祭典もすべてここで執り行うため、ここを参拝すれば三山すべて巡ったことになるのだ。

とはいえ、この三山にはそれぞれの素晴らしい社殿と自然景観がある。
それぞれを巡ることは死と再生を辿る「生まれかわりの旅」とも言われてきた。
これからの季節、身も心もリセットされて、新しい自分を創り満たしてくれる山形・出羽三山へ一度訪れてほしい。

 

すべての生きとし生けるものには魂があり、自然の中から生み出されてきたもの。そう考えると今目の前にあるこのラスクにも、どれだけの命と魂と情熱が宿っているのか・・。

朝から降り続く雨に大地を潤し作物を育む力を感じながらありがたくラスクを口に運ぶ。
意識を少し変えるだけで自分自身も変われるような気がする。
新しい自分に生まれ変わる信仰文化と食文化が今の自分を作っているのかもしれない。