古いものを活用する里山の暮らし

 森に囲まれた里山ソムリエな日々
里山でラスクを頂きながらあんなこと、こんなことおしゃべりする、そんな時間が届きますように。

間引き野菜の点心弁当とラスク

 

 私が山形県に移住したのは7月でした。初めて山形を旅したのも7月でした。ここに暮らして何回目の7月を迎えたのでしょうか。

 たった一度旅に来て、移住することを決心し、2回目にやってきたのは、住む場所を見つけるために、そして3回目は、もう住人になっていました。

 あの日、初めて訪れた山形の7月は、梅雨とは思えないような、青空が広がっていました。道沿いには、大きな紫陽花の花が美しく並んで迎えてくれました。
偶然入った田んぼの中にあるお蕎麦屋さんでは、まるで物語に出てくるようなおばあさんが手ぬぐいをかぶってお茶を運んでくれました。
お蕎麦だけを頼んだはずなのに、おかずやデザートを頂き、話しているうちに帰りのお土産に、取れたての野菜までいただきました。

 両親ともに東京の出身で、小さな頃から田舎に憧れていた私は、初めて訪れたのに懐かしさを感じました。この世界に入り込んで暮らしたらすごい!と思い、移住してしまいました。

 七夕の時期には、お茶でも「葉蓋のお点前」(水差しの蓋を葉で代用するお点前)がありますが、山形の暮らしは、普段の暮らしに葉っぱがたくさん登場します。
七夕の茶会に使われるのは梶の葉が一般的ですが、おにぎりを包む葉と同様に毒気や匂いのないものでしたら、桐や蓮、柏など裏山からのものを利用できます。なんと風流なのでしょう。

 間引いた人参や大根の葉のおにぎりにラスク添えた点心弁当をいただいたら、お抹茶をたてて、お菓子と一緒にお点前を青空の下で楽しみましょう。

森の中の子どもたち イラストJ. Kikuchi

 

 山登りの大好きな先生が、「山に登るには、服装も体もきちんと準備して楽しい冒険にすること。装備がなくては冒険でなくて、危険になるよ」と、おっしゃっていたことを覚えています。

家の裏の森に入る子どもたちに「長靴を履いて、長袖、長ズボンで、帽子をかぶってね」と、いつも言っているのを子どもたちは、しっかりと聞いていたようです。森の中を覗いてみると、装備をきちんとして遊んでいました。

 森に入る時は、ちょっぴりハーブを効かせたお水をまとって入ります。小皿にお水をはり、そこにゼラニウムとユーカリのエッセンシャルオイルを数的垂らして、古くなった茶筅でかき混ぜて作ります。

 学生の頃、鎌倉で茶会をした時に、花を任された私が、床の間に花を活けていると、先生がいらして最後に茶筅でお水を花にかけていたことを思い出し、スプレーの代わりに古い茶筅を活用しています。

 用途ごとにいろいろな新しいものを準備する暮らしは、便利なようで不便なこともあります。あるものを代用したり、古いものを活用する暮らしは意外に便利です。季節や月の満ち欠け、先人の知恵は、気がつけば、いつもそばにあるもの。

 歳を重ねていくと、いろんな経験で装備をした分、人生は、楽しい冒険に変わっていくのかもしれませんね。

 外の風が涼しくなった宵の頃、今度は、ハーブの香りを聴きながら、ラスクでゆっくりとした時間を過ごすのも贅沢です。二枚のラスクをいただいてから、ハーブティーを頂き、ぐっすりおやすみなさい。