花笠まつりの「もうひとつの主役」

前回、東北の4大まつりのひとつ、「山形花笠まつり」について紹介した。

暑い夏をさらに熱く盛り上げる山形の夜がいよいよやってきた。その花笠まつりに欠かせないものが、踊り手が手にする「花笠」。
踊りを華やかに景気よく演出してくれる花笠であるが、実は毎年、人の手によって一年がかりで作られているということはあまり知られていない。

山形花笠まつりの「花笠」は、すげ笠(昔話の花咲かじいさんが、おじぞうさんにかぶせてあげたアレ)に花をつけたもの。踊り手をはたから見るとどれも同じように見えるが、実は大きさが違う。

着物を着てしなやかに踊る正調花笠女踊り「薫風最上川」に用いられるものは、直径33センチ、勇壮な正調花笠男踊り「蔵王暁光」用のものは42センチ、笠回し用は47センチなど、振り付けや用途に合わせて様々な大きさがあるのだ。

一般的に販売されている花笠の大部分は、山形県飯豊町の中津川地区で作られている。
この地区は朝日連峰、飯豊連峰の雄大な山々に囲まれた農村地域。冬は2~3メートルほど雪が積もる豪雪地帯でもある。

そんな地域で、昔から冬場に農作業用のすげ笠を作っていたのだが、それが今は山形花笠まつりで使用されているのだ。
その生産シェアはなんと8割。ほとんどが中津川産だ。

現在は15名ほどのおばあちゃんたちが作り手としてこの地区の伝統文化になっているが、その技を受け継ごうと新たに技術の習得に取り組む人も増えているという。

花笠の原料となるスゲは高さ1メートルほどに成長する多年草。このスゲを7月下旬から9月にかけて刈り取り、乾燥させて選別する。実際に笠を編む作業は、晩秋から雪解けにかけて行われる。

まず木と竹で骨組みをつくり、横方向、その後縦方向にスゲを巻き付けて笠の形を作っていく。
その後笠を編んでいく作業にはいり、花や鈴、ひもなどをつけて完成だ。
いずれの工程も手作業で、熟練の技を生かしたひとつひとつ丁寧につくられているのだ。そうした花笠に花などをつけていくが、仕上げの工程も全て手作業。

実際に手にとってもらえば分かるが、笠についた花はプラスチックの出来合いのものとはまるで違う手触り・色合い・質感をしている。
この花も切り抜いた布をプレス加工して花の形にあしらったもの。ひとつひとつの花にさえ作り手のこだわりが生きているのだ。

以前ある団体の踊り手さんが使っている花笠を見せてもらったことがある。
その団体はオリジナルの振り付けも交えながら激しく笠を回して踊るパフォーマンスで、今や様々なイベントにも引っ張りだこなのだが、ちょうど持ち手の部分がだいぶボロボロになっていた。

それでも先輩たちから受け継いだ笠でもあるし、作り手の思いも大事にしたいということで、持つことができなくなるまで使い続けたい、と話していた。
この話しを中津川のおばあちゃんたちが聞いたらどんなに感動するだろうか。

花笠踊りは県内のみならず、県外、そして海外の人たちにも人気だ。
さらに中津川は、県内でも有数の県外移住者を積極的に受け入れている地域でもあるし、外国人観光客が注目している場所でもある。

踊りとは違うもうひとつの「花笠文化」を観光資源として、花笠踊りや笠作り体験のプログラムも人気を博しているという。

モノを作るというのは、本来モノよりも気持ちや思いがなければ良いものはできないし、多くの人に親しまれれることはない。
そして誰よりも負けない「愛」があるからこそ、どんな困難や試練があったとしても乗り越えられる力になるのではないだろうか。

 

シベールのラスクも然り。ラスクを作るためのパンをその時の気温や湿度に応じて、ひとつひとつ丁寧に作り上げている。

ラスクを作るためだけにパンを作るなどバカげている、と言われながらも、美味しさと、究極のラスクを提供しお客様に喜んでもらうという、その使命だけで今では山形を代表する洋菓子となった。

花笠を使う人の笑顔・ラスクを食べる人の笑顔がたくさん生まれる山形の夏である。