秋の実りとクヌギのどんぐり

森に囲まれた里山ソムリエな日々
里山でラスクを頂きながらあんなこと、こんなことおしゃべりする、そんな時間が届きますように。

秋の実りとラスク

 

 森へ行くと、たくさんのクルミが真っ黒な果皮をつけたまま落ちています。バケツに拾い集め、それを袋に入れ、小川の流れに晒しておくと、写真のようにクルミの殻がきれいに現れます。

季節のものが取れたら、旬のもの同士を掛け合わせた美味しい料理があります。その一つが、柿の白和え。クルミをすり鉢ですって、水切りしたお豆腐とみりん、砂糖、白だしをなどを合わせ、柿を絡めたものです。

 里山では、美味しいおかずのお裾分けを隣近所ですることがありますが、この白和えも、そんなご近所とのお付き合いでお相伴に預かったものです。美味しさに感動して、作り方を教えていただき、再び感動しました。

 柿は、庭の渋柿のヘタに焼酎をつけてしばらくおいて甘くしたもの。そして、くるみは、裏山から集め、果皮を洗って殻を割り、実を取り出したものでした。私がお裾分けするものに比べたら、なんて手間暇がかかっているものなのでしょう。

 季節とともに地元の人が普段食べているものを頂き、食材の調達方法や調理法など、その土地の食文化を理解して行くことは、とても楽しく、その土地を理解する上で大切なこと。周りの方のお裾分けをいただきながら、少しずつ、旅の人から土地の人となって行くのかもしれませんね。

 北欧デンマークに暮らしたとき、ライ麦パンにバターを塗り、サラミを乗せた食事が多かったのが、山形に暮らすと、ごはんとお味噌汁が美味しいと感じます。味は舌だけでなく、頭や目やいろんなところから生まれてくるからでしょう。

 ラスクの故郷は、空気と水のきれいな場所、そして作り手のスピリットを感じることが美味しさを一段と高めてくれているのですね。

クヌギのどんぐり J. Kikuchi

 

 小さな頃から、どんぐりを拾うことがとても好きでした。都内には、どんぐりの木のある公園が結構あります。家の近くの公園には、大きなシイの木があり、細長いどんぐりをよく拾いました。高校時代、部活動で、学校から目黒にある林試の森まで走って行くと、そこには、クヌギやアベマキの丸いどんぐりが落ちていました。今でもどこにどんなどんぐりが落ちているか、秋になると思い出します。

 どんぐりとは、クヌギやカシなどのブナ科の木の実のことを言いますが、日本には、20種類以上のどんぐりがあるそうです。森の動物たちの大切な食べものどんぐりは、縄文時代には、人間にとってもスーパーフードでした。

 仕事でイギリスに暮らしていた頃、ポートベローのアンティーク市に出かけるのが楽しみでしたが、当時集めたガラクタの中で、今でも家のキッチンに飾っているのが、どんぐりを煎る銅製の、柄の長い小さなフライパンです。いつかどんぐりを煎る暮らしを夢見て、一緒にずっと旅をして来ました。

 肌寒い休日の朝、外で火を焚き、シイの木のどんぐりの殻から実を取り出し、そのフライパンで煎ってみました。コロンビアのコーヒー豆に、煎ったどんぐりを混ぜて朝のコーヒーにいただくと、「秋の森」を感じる深い味わい。

 森のどんぐりコーヒーにたっぷりのミルクとお砂糖を入れて、今度は誰かと一緒にいただきたいな。美味しいコーヒーとラスクがあれば、寒さに向かうのも愉しみですね。