全国一の山形県南陽市の菊づくり

菊を見ると、中学校時代を思い出す。
全校生徒一人一鉢ずつ菊を育て、秋の文化祭の時期になると廊下にずらりと飾られるのだ。

こんもりと大輪の花を咲かせるもの、まだ蕾のままのものなど、花にも個性があるのか様々な表情を見せていた。

よく、花にも愛情を持って育てれば、きちんとそれに応えてくれる。と言われているが、私も例に習って毎日の水やりの時には、「文化祭に間に合うようにきれいに咲いてね。」と声を掛けていた。(他の誰にも気づかれないように小さい声で・・・笑)

そんな経験からか、菊の花を見るといつもこの当時のことを思い出すのである。

 

山形県の南に位置する南陽市は、100回以上続く「南陽の菊まつり」が開催される。
南陽市での「菊」の歴史は古く、市の花にもなっており、香り高い文化のまちづくりのシンボルとして愛されている。菊づくり全国一の歴史、技、文化を誇る全国各地から観光客が訪れるお祭りだ。

旧暦の9月9日は重陽の節句、別名菊の節句とも呼ばれている。古来中国では、菊の花は不老長寿の妙薬として珍重され、重陽の節句には菊の花を浮かべた酒を酌み交わし、長寿を願ったとも伝えられいるのだ。

一方南陽の菊作りの歴史は、上杉時代(17世紀初期)から始まった。菊人形は、大正元年宮内地区にあった料亭「山崎屋」が、人形師菊地熊吉氏に頼み、木彫りの人形に菊の花の衣装を飾り見せたのが最初だと言われ、翌大正2年に菊の品評会を開催したのが菊花展の始まりだったそうだ。

菊まつりの一番の見所は、やはり菊の花や葉を細工して人形の衣装としている菊人形の展示だ。
菊人形の制作には、菊付けや人形づくりの小道具、大道具など多くの専門の技が必要になる。

 

南陽の菊まつりの特色は、ほかの菊人形展では複数の職人が制作しているところを、そのすべてを一人の人形師が担っているという点だ。
菊人形が始まって以来、先述の菊地氏が制作を続け、現在は二代目が初代の技を受け継ぎ独自の菊人形として定着してきた。

美しい菊の衣装をまとった菊人形は、今にも言葉を発して動きだしそうなほどリアルで艶っぽい。

毎年映画や時代劇などの1シーンを表現していて、南陽では例年NHKの大河ドラマと同じテーマで構成している。

今年は「おんな城主 直虎」。名場面が華麗にそして勇壮に再現され、その賢覧豪華な時代絵巻は観る人を魅了している。
さらに今年は宮内地区・熊野大社でも「竹取物語」がテーマとなった菊の花をアレンジした展示がされている。黄色や白、紫や赤など色とりどりの菊とかぐわしい香りに包まれながら、人形師の伝統技が施される細工の素晴らしさに見入ってしまう。

 

 

また会場には、南陽市・山形県菊花品評会として1200鉢もの菊花が展示されており、高貴な雰囲気を醸し出す菊の美しさを堪能できる。なんでも嗅覚は人間の五感の中で一番原始的本能をつかさどるらしい。

菊の香りを嗅ぐと菊を育てた中学時代の頃を思い出すのと同時に、彩りある花を見ると色んなフレーバーのラスクを思い出してしまう、文化の秋というより食欲の秋の私だ。

秋の一日、優雅な菊の花を愛でながら、菊の香りに酔いしれ会場内をのんびり散策してみるのもいいかもしれない。